本ニュースの3行要約
- Googleがこれまでで最も知的だとする新モデル「Gemini 3」を発表。マルチモーダルと高度な推論能力を大きく強化。
- Gemini 3 Proと推論性能をさらに高めた「Gemini 3 Deep Think」を軸に、学習・開発・長期計画・エージェント機能まで幅広く対応。
- GeminiアプリやAI Mode in Search、Vertex AIなどGoogle製品群に横断的に展開し、次世代の“エージェント時代”を見据えた展開が始まる。
Gemini 3とは:Gemini時代の集大成となる「最も知的なモデル」
Googleは2025年11月18日、Geminiシリーズの新世代モデル「Gemini 3」を発表しました。
Gemini 1で切り開いたネイティブなマルチモーダル対応と長大なコンテキスト、Gemini 2で強化されたエージェント的な推論・実行能力を土台に、Gemini 3では「知性の深さ」と「文脈理解」をさらに押し上げた位置づけになります。
Gemini 3は、テキストだけでなく画像・動画・音声・コードなどを横断的に理解し、複雑な問題を分解しながら解決することを目指したモデルです。
ユーザーがうまくプロンプトを書かなくても、意図や背景をくみ取り、少ない指示で「本当に欲しかった答え」に近い出力を返せる点が大きな特徴とされています。
すでにAI Mode in SearchやGeminiアプリ、開発者向けのAI Studio・Vertex AIなど、Googleの主要プロダクト群に順次展開が始まっています。
Gemini 3 ProとGemini 3 Deep Think:最先端ベンチマークでの性能
Gemini 3シリーズの中核となるのが「Gemini 3 Pro」です。
マルチモーダル理解と推論性能において、前世代の2.5 Proをほぼすべての主要ベンチマークで上回り、LMArenaリーダーボードでは Elo 1501 を記録するなど、フロントラインモデルの中でも最上位クラスのスコアを叩き出しています。
・Humanity’s Last Exam、GPQA Diamond、MathArena Apex といった高度な推論・数学系ベンチマークでSOTA級のスコアを記録
・MMMU-Pro、Video-MMMUなどマルチモーダル系ベンチマークでも高スコアを達成
・SimpleQA Verifiedで72.1%と、事実性と正確さの面でも大幅に改善
さらに、推論性能を極限まで引き上げるモードとして「Gemini 3 Deep Think」も用意されています。
Deep ThinkはGemini 3 Proを上回るスコアで、Humanity’s Last ExamやGPQA Diamondに加え、ARC-AGI-2(コード実行あり)で45.1%という前例のない水準を達成しており、「より難しく、新しい問題」を解くための強化モードという位置づけです。
まずは安全性評価のためにテスター向けに提供され、その後Google AI Ultraサブスクライバー向けに展開される予定です。
Gemini 3の新しい使い方
Gemini 3は単なるQAボットではなく「学ぶ・作る・計画する」という3つの軸で、日常と仕事の両面を支援する存在として設計されています。
- テキスト・画像・動画・音声・コードをまたいで情報を統合し、ユーザーに合った形で解説
- 家族の手書きレシピを読み取り、言語をまたいで“家族のレシピ本”として再構成
- 学術論文や長尺の動画講義を読み込み、インタラクティブなフラッシュカードや可視化コードを生成
- スポーツ(例:ピックルボール)のプレー動画を解析して、フォーム改善のためのトレーニングプランを提案
- ゼロショットでの生成性能が高く、複雑なプロンプトからリッチなWeb UIやインタラクティブなコンテンツを生成
- WebDev Arenaで Elo 1487 を記録し、「vibe coding」「agentic coding」モデルとしても高評価
- Terminal-Bench 2.0やSWE-bench Verifiedでも2.5 Proを大きく上回り、ツール連携やコーディングエージェントとしての能力が強化
- レトロな3Dスペースシップゲームや3Dボクセルアート、SF世界のプレイアブルデモなど、コードベースでのビジュアル表現も得意
- Vending-Bench 2で他モデルを上回るスコアを記録し、長期的な計画・意思決定に強み
- 1年分のシミュレーションを通じて、一貫したツール使用と意思決定を維持しつつ収益最大化を図るなど、「長い時間軸のタスク」をこなせる
- 複雑なマルチステップのワークフロー(ローカルサービス予約、メール整理など)を、ユーザーのガイドのもとで実行
【開発者向け】「Google Antigravity」によるエージェント開発の再設計
Gemini 3の登場に合わせて、Googleは新たなエージェント開発プラットフォーム「Google Antigravity」を発表しました。
これは、従来の「補助的なコードアシスタント」から一歩進めて、AIエージェントを本格的な“開発パートナー”として位置づけるための環境です。
- エージェントがエディタ、ターミナル、ブラウザに直接アクセスし、複雑なソフトウェアタスクの計画〜実行〜検証までを自律的にサポート
- フライトトラッカーアプリのようなエンドツーエンドの開発フローを、Gemini 3とComputer Useモデル(Gemini 2.5 Computer Use)が主導
- AntigravityはGemini 3 Proに加え、ブラウザ操作に特化したモデルや画像編集向けのNano Banana(Gemini 2.5 Image)とも連携
開発者はGoogle AI StudioやVertex AI、Gemini CLIに加え、Cursor・GitHub・Manusといったサードパーティの環境でもGemini 3を利用できます。
Gemini 3の主な仕様と提供範囲
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル | ・Gemini 3 Pro ・Gemini 3 Deep Think(推論強化モード) |
| 特徴 | ・最先端のマルチモーダル理解と推論性能 ・エージェント・コーディング能力の強化 |
| 主な用途 | ・学習支援 ・情報整理 ・Web UI生成 ・ゲームやコード生成 ・エージェント実行など |
| 代表的ベンチマーク | ・LMArena ・Humanity’s Last Exam ・GPQA DiamondなどでSOTA級 |
| コンテキスト | 最大100万トークンのコンテキストウィンドウ(長文・長時間コンテンツの取り扱いに対応) |
| 提供開始 | 2025年11月より順次提供開始 |
| 提供チャネル(個人向け) | ・Geminiアプリ ・AI Mode in Search(Google AI Pro / Ultraなど) ・Gemini Agent(Google AI Ultra向け) |
| 提供チャネル(開発者向け) | ・Gemini API(AI Studio) ・Google Antigravity ・Gemini CLI ・Vertex AI ・サードパーティIDE/プラットフォーム |
| 安全性対応 | ・包括的な安全評価 ・プロンプトインジェクション耐性強化 ・サイバー攻撃悪用対策 ・シンカシー(迎合的態度)の低減など |
責任ある開発と安全性:Google史上「最も安全なモデル」を掲げる
Gemini 3はGoogleいわく「これまでで最も安全なモデル」と位置づけられており、これまで以上に広範囲で安全評価が行われています。
・プロンプトインジェクションへの耐性強化
・サイバー攻撃などへの悪用リスク軽減
・過度にユーザーに迎合する“sycophancy(イエスマン傾向)”の抑制
社内評価に加え、UK AISIをはじめとする外部機関や、Apollo、Vaultis、Dreadnodeなど外部の専門家とも連携して検証が進められており、モデルカードとして詳細な情報も公開される予定です。
Gemini 3時代のはじまり:今後の展望
Gemini 3は、単体のモデルというより「次のAI時代の基盤」として位置づけられています。
すでにGeminiアプリ、AI Mode in Search、Vertex AI、Gemini Enterprise、そしてGoogle Antigravityなど、Googleの主要なレイヤーに順次展開が始まっており、今後はさらに追加モデルや派生バージョンの投入も予定されています。
Googleは、このGemini 3を起点に「インテリジェンス」「エージェント」「パーソナライズ」の3軸をさらに強化し
- 高度な推論ができるAI
- 自律的に行動できるAI
- ユーザー一人ひとりに最適化されたAI
という方向性にプロダクト全体を進化させていく方針です。
今後、あなたが検索をするときやアプリで学ぶとき、コードを書くとき、その裏にはGemini 3が動いている、という世界が一気に現実味を帯びてきました。
参考:Google「A new era of intelligence with Gemini 3」https://blog.google/products/gemini/gemini-3/#note-from-ceo


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